岡崎裕美

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赤いポルシェ盗難事件 後書き あれから2年後・・・
赤いポルシェ盗難事件 その5
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赤いポルシェ盗難事件 その5


2006年4月17日

そして30分後、待ち合わせの交番へ・・・。ドキドキ!
 そこには一人のオジサンが立っていました。横にはさっきのAさん。

Aさん  本当に申し訳ございません。うちの会社のBが昨日銀行で用事を済ませた後、隣りにあった赤い自転車と間違えたらしいのです。

裕美 とにかく見つかってよかったです。でも、間違えて私の自転車に乗った時、サドルの高さやハンドルの握り具合の違い、それにこんなに可愛いテントウムシのベルが付いていることに気付かなかったんですか?昨日からいろんな方にお手数をおかけしながら、やっと見つけることができました。なにしろ20年も大切に乗り続け、3度の引っ越しの度に生活を共にした自転車なんです。最後まで諦めなくてよかったです。
Aさん すみません、乗り心地まではわかりませんでした。会社で使用している自転車の一台なので、そこまで思い入れもなくて・・・いやはや・・・
裕美 20年も使用した、古い自転車一台のことですが、ある日ある時たった1~2分に間に突然消えてしまったんです。なぜ?って思いますよね~?もうオンボロ自転車なんだから買い替えるいいチャンスと考えるのも一つですが、なぜ突然姿を消したのか!?そこだけは知りたかったんです。ポルシェを連れていった方のなんらかのお役に立ってもらわれていったのなら、それも運命!・・・でも、20年の人生を共にした私と離れてしまって寂しい思いをしていたら可哀想・・・。そんな気持ちで昨日から過ごしてまいりました・・・。

と、切々と思いを訴える私。

 そこでふと周りを見渡すと、お巡りさんが、クククッと笑いをこらえている様子。私の自転車に対するあまりの真剣さに、可笑しくなってきたらしい・・・(^_^;)
後になって考えてみるると、《そろそろ茶色に変色しかかった20年もののオンボロ自転車》に人生を重ね合わせてAさんに語った自分がなんともオーバーで (;^_^A、可笑しくて(^_^;) 笑い転げたけれど、その時は盗難事件を自分で解決したこともあって相当興奮していたのでした。

 その後どうなったかって?・・・(^_^;)
私の自転車に対する熱意に、笑いをこらえながら同席しているお巡りさんや、私のあまりの真剣さにキョトンとしているAさん、何やら辛そうなBさん・・・
( ◎ - ◎ ;)
辛そうなBさん・・・???と、Bさんをよく見ると、何か手に持っている。何?どうしたの?
 するとBさん「本当に不注意で申し訳ありませんでした。それでこれはうちの会社で扱っているお米なんですが、お詫びのしるしに召し上がって頂ければと思いまして・・・」とお米5kgを差し出すのです。
 え、え、ええ~~~~っ?!このBさん、この5kgを手に持ったまま、私の話を聞いてくれてたの? ・・・(*_*)
 アチャ~~~~ッ!そ、そ、そんな~~~っ(>_<)。
( @ _ @ ; ) お詫びのお米はともかく、5kgを下にも置かず、私の話に一生懸命耳を傾けてくれたBさんに感動したのでした。ありがとう!そんな健気なあなたに間違われたことは、これまた私とポルシェの忘れられない思い出になるでしょう。(^.^#)
交番を後にした私は、親切に対応して下さった自転車屋のオバサンとオジサン、それからマッちゃんデカにお礼と経緯を報告したのでした。みなさんのおかげです。
ありがとうございました。

 その後、Bさんの会社の駐輪場を通るたび、赤い自転車を確認する私でした。「今日もBさんとお仕事頑張ってね~\ (^-^) /」